top of page
  • 執筆者の写真ATAインスティテュート

佐藤 唯(Yui Sato)

更新日:2020年5月26日


学校名:福島県立あさか開成高等学校 2012年度卒業

宇都宮大学 国際学部 2016年度卒業

名 前:佐藤 唯(Yui Sato)

留学プログラム:短期留学 ボランティア

留学国:カンボジア

留学期間:2012年8月 6日間




 私が海外研修でカンボジア・シェムリアップ州を訪れたのは、高校3年生の時です。初めての海外でした。国際協力を主にもともと海外には強い関心を持っており、さらに通っていた高校は国際理解教育に力を入れている学校だったのですが、“カンボジア”と聞いたときは、いつか社会科の教科書で見た世界遺産の“アンコールワット”のイメージしか思い浮かばなかったのを覚えています。

 カンボジア研修は1週間で、そのプログラムには、孤児院訪問、日本語学校訪問、遺跡観光、NGO活動見学、トンレサップ湖クルーズなどが組み込まれていました。事前準備としては、主に孤児院、日本語学校訪問で行なう日本文化の紹介をメインに行ない、個人的にはカンボジアがどのような国なのかを簡単に調べて行きました。

 孤児院では日本の昔話を披露したり、子どもたちと遊んだり、伝統衣装を着せてもらってみんなで踊ったりと、楽しい時間を過ごしました。みんな親、家族がいない子どもたちです。その背景を忘れてしまいそうなくらい明るくて人懐っこい、元気な子どもたちに驚きました。訪問させていただく側として、子どもたちに楽しんでもらおうと意気込んで行ったのですが、あまりのパワフルさに私たちの方が逆にパワーをもらい、最終日には別れが寂しくて、研修メンバー全員で泣いたのもいい思い出です。


 日本語学校では、日本の文化紹介・体験を行ないました。内容は書道、茶道、盆踊りで、私は書道と盆踊り係でした。きちんと伝えることができるのか不安な気持ちだったのですが、人に教える経験もほとんどない私達の説明を真剣に聞き、真似をし、間違いを恐れず積極的に話す姿を見て、日本語学校の学生達の“学ぶ”という意識を強く感じられました。中学から英語を勉強し始めた自分とは打って変わって、彼らの日本語能力はものすごく高く、通い始めてほんの数年でもほとんどコミュニケーションに困らないくらいでした。私だけでなく他の研修メンバーも、日本の学生にはこんなに高い学習意欲を持つ人はなかなかいないのではないかと驚いていました。ほんの数時間の短い滞在だったのですが、彼らのそんな姿に大いに刺激を受け、自分自身の学業への意識がぐんと高まりました。今でも現地で出会った学生達との交流は続いており、日本の大学に入学したり、日本で働き始めたり、はたまた現地で日本語ガイドとして活躍していたり、以前と変わらず刺激をもらっています。

 遺跡観光で訪れたアンコールワットは、思わず言葉を失うほどの美しさでした。高校生ながらに、あまりの美しさ、壮大さに感動し、時が止まったような思いでした。あの感動は今でも忘れることはありません。

 日本で、カンボジアはネガティブな要素を多く紹介されがちです。メディアはもちろん、インターネットで調べてみても、孤児院のことはもちろん、学校に行けない、仕事がない、地雷がまだ埋まっている所がある…などの情報が多く見られます。実際私自身も、カンボジアに行く前のイメージは“アンコールワット”だけだったのに、調べるにつれて"発展途上国"というイメージが強くなっていきました。もしかしたら訪れてもみんな暗い表情で、どんよりと怖い雰囲気なのではないか?みんな苦しい生活をしているのではないか?と。いろいろと調べていくうちに出会う様々な情報に、ほんの少し恐怖さえ覚えた瞬間もありました。そのような世界の現状があるということを知識として知ってはいても、やはりどこか実感がなかったのだと思います。

 しかし実際行ってみるとすべてが覆されたようでした。周りを見渡すと、本当に笑顔が多くて、楽しそうに生活している様子が垣間見えます。私の想像していたネガティブな要素とは違うものばかりが広がっていて、むしろ幸福ささえ感じられました。と同時に居心地の良さまで感じられるくらいで、帰りたくないという気持ちすら芽生えました。初めてカンボジア・シェムリアップ を訪れた方々は、きっと同じようなことを感じる方が多いのではないかと思います。もちろんネガティブな諸問題は嘘ではなく確かに存在します。日本と比べると衛生面が心配な部分もあったり、物乞いの子どもたちがいたり、地雷で手足を失った方もたくさん目にしました。それ以外にも1週間という短い期間では見えない部分は数え切れないほどあったと思います。しかし、人から聞いたり、調べたりするのと、実際に足を運ぶのとでは感じ方が全く異なるのだということを、この研修で身をもって実感しました。発展途上国とされてはいるけれども、その場所にはその場所の良さがあり、幸せがあるのだということを知ることができたのは、私自身の日々の暮らしへの考え方に置いても財産となったと思います。また、日本から見た他国を“こうだ!”と決めつけ、知らず知らずのうちに作られた固定概念の存在に気づけたことも、研修を通した成長だったと思います。カンボジアに限らず他の発展途上国と呼ばれている国々も、メディアなどの情報だけで判断せずに、じっくり知って行きたいというように考えるようになり、視野の広がりも感じられました。帰国する頃にはすっかりカンボジアが好きになっており、家族や友人へのお土産話では、必ずと言っていいほどカンボジア旅行を勧めるほどに充実した1週間でした。

 そんなカンボジア研修での学びが刺激となり、またカンボジアという国に魅了されたこともあって、国際関係を学ぶために大学に進学し、何度かカンボジアに足を運びました。回数を重ねるにつれ、カンボジアについてもっと知りたいという気持ちが強くなり、2019年には現地採用で1年間シェムリアップ州で働き、生活をしました。関わりを増やしていけばいくほど、いいも悪いもたくさん見えましたが、カンボジアが好きな気持ちはずっと変わることはありません。



 今、当時のことを振り返って思うことは、もしこの研修がなければ、人生の中でカンボジアに足を運ぶことはなかったかもしれないということです。当時は高校卒業後の進路も考える時期だったのですが、研修に参加していなければ、もともと就職希望だったこともあり、大学へ進学して世界について学び続けることはしなかったのではないかと思います。カンボジア研修があって、世界をもっと見たい、まだまだ勉強したい、学びたいという気持ちがとても強くなりました。それから、もし旅行などで行ったとしても、この研修でなかったら、多少のリスクを背負ってまでもカンボジアに住んでみようとは思わなかったと思います。そのくらいこの思い出は心に深く刻まれていて、私にとってはこの研修が“人生を変えた”と言っても過言ではありません。あのとき、カンボジア研修があったことに心から感謝しています。そしてこれからも、時間を作って、またカンボジアへ行けたらいいなと思っています。 END

閲覧数:50回0件のコメント

Comments


bottom of page